瑠璃唐草は、青い花の名前です。720mlで1500〜1800円台、季節ものではなく一年中買える純米吟醸。山口市徳地の新谷酒造が「わかむすめ」の定番として2021年に出した、世界に認められた蔵のいちばん手の届く一本です。
世界が認めた蔵
新谷酒造の上位酒「わかむすめ 燕子花(かきつばた) 純米大吟醸」は、2024年に二つの賞を受けています。イギリスの品評会IWC(International Wine Challenge)2024 SAKE部門で純米大吟醸酒部門のリージョナル・トロフィー、フランスのKura Master 2024で純米大吟醸酒部門のプラチナ賞。英と仏、同じ年に認められました。(IWCとKura Master、それぞれの賞の序列は用語解説(日本酒編)にまとめています。)
ただ燕子花は数の限られた高価な酒です。世界に届いた蔵が通年・手頃に出している入口の一本、それが瑠璃唐草です。
通年で手の届く主役・瑠璃唐草
瑠璃唐草が出たのは2021年。燕子花のような限定酒ではなく、一年中棚に並ぶ酒です。蔵は少量ずつ仕込む四季醸造で、瑠璃唐草も季節ごとに表情が少し変わります。同じ名前でも、夏と冬では味の輪郭がわずかに違う。
どんな味と香り
取扱店の佐野屋は、「和梨や青りんごを思わせる爽やかな吟醸香」「ふくらみのある旨味」「軽やかに引いていく余韻」と紹介しています。
ハレトケは、「和梨のような瑞々しく甘爽やかな香り」「透明感のある綺麗なアタック」、そして「軽快な酸が味わいをピシッと整え、程良いキレ感」と評しています。
大和屋の店長評は、「きれいな甘味ときれいな酸のバランス」「透き通るようなクリーンな味わい、甘旨ながらスッと軽やかに抜けるような後味」。
三つの店がそろって、和梨や青りんごの香りと、軽いキレに触れています。蔵元自身は「しっかりとした味わいがありつつも、食事に寄り添えるキレの良い仕上がり」と紹介しています。
瑠璃唐草という名前
瑠璃唐草(るりからくさ)は、ネモフィラの和名です。春に青い花を一面に咲かせる、あの花。「瑠璃」は平安の襲色目(かさねのいろめ)にもある、青と紫のあいだの深い色の名でもあります。
山口市徳地の蔵で
新谷酒造の創業は1927年(昭和2年)。二代目・新谷末彦の頃には「和可娘(わかむすめ)」の名で地元に親しまれていました。
その蔵が、跡継ぎ不在で行き詰まります。長く支えた杜氏も高齢で引退が近く、廃業が現実になりかけた。そこで孫の新谷義直さんが三代目(代表)として戻り、「一人でも造り続ける」と決めます。2007年(平成19年)、一年中仕込める四季醸造の蔵へ改装しての再出発でした。
味を大きく動かしたのは、妻の新谷文子さんです。看護師の資格を持つ文子さんが、2018年(平成30年)に四代目杜氏に就きました。山口県で唯一の女性杜氏。仕込みも酵母も配合も見直し、その手で蔵の酒は国内外の評価へ届いていきます。改装した蔵は梁の損傷で設備を移すなど、その後も幾度かの危機を越えてきました。
夫の義直さんが再建の土台を据え、妻の文子さんが杜氏として味を磨く。二人三脚で英仏ダブル受賞の蔵になりました。瑠璃唐草は、その夫婦が日々造り続けている定番です。つくり手のことは、新谷酒造の公式サイトで。
買えるところ
正直にお伝えすると、買いにくい酒です。造るのは夫婦二人、量はごく限られます。日本経済新聞によれば、生産量の2倍以上の注文が来て、地元の山口市でもなかなか飲めない「幻の酒」になりつつあるとのこと。品切れになることもあります。それでも入口は通年の一本。下のリンクから取扱店の在庫を当たってみてください。
※取扱店の購入ページです。
価格や在庫は変わります。最新は新谷酒造の公式サイトや各店で確かめてもらえたらと思います。
出会えたら、その季節の顔を
四季醸造の酒だから、夏に飲んだ瑠璃唐草と冬に開ける瑠璃唐草は、同じ名前でも少し違う顔をしています。世界に届いた夫婦の蔵が、それでも通年・手頃に出し続けている一本。自分に合う飲み方の手がかりは適酒とはに、飲んだ夜のひとことはマイドリのアプリに。
出典:山口市公式トピックス、Kura Master 2024 公式データベース、新谷酒造「わかむすめ」公式サイト、日本経済新聞、佐野屋・ハレトケ・大和屋 各オンラインショップ