会津盆地の西、福島県河沼郡会津坂下(あいづばんげ)町に蔵を構える曙酒造。創業は明治37年(1904年)。日露戦争が始まった年から、120年あまりのあいだ会津の地で酒を醸してきた蔵です。いまは六代目の鈴木孝市(すずき・こういち)さんが蔵元杜氏を務め、代表銘柄「天明」をつくっています。
IWCとKura Master、二つの舞台で
今回の主役「金色の天明」(天明 純米大吟醸)は、世界最大級の酒の品評会のひとつ、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2025のSAKE部門で、純米大吟醸酒部門のゴールドメダルを受けました。ラベルを伏せたブラインド審査で、この部門のゴールドに選ばれた一本です。(メダルやトロフィー、チャンピオン・サケといったIWCの賞の序列は、用語解説(日本酒編)にまとめています。)
天明の評価は、これ一度きりのものではありません。定番の「オレンジの天明」(天明 純米火入)は、フランスで開かれる日本酒コンクールKura Master 2023の純米酒部門で金賞を受けています。Kura Masterは、フランス人のソムリエやレストラン関係者が、料理と楽しむ視点でラベルを伏せて審査する品評会です。国内外、視点の異なる二つの舞台で評価を重ねているところに、この蔵の実力が表れています。
三代の女性が守り、六代目が継いだ蔵
天明を語るうえで外せないのが、曙酒造の来歴です。この蔵は、三代続けて女性が蔵元を務めた「女系の酒蔵」という、全国でもめずらしい歴史を持っています。酒造りが長らく女人禁制とされてきたことを思うと、それがどれだけ稀なことかがわかります。
その流れを受け継いだのが、六代目の鈴木孝市さんです。孝市さんは2011年、27歳のときに母から杜氏の職を引き継ぎました。全国でも数少ない、20代の若い杜氏の誕生でした。
その2011年は、東日本大震災の年でもありました。曙酒造も蔵の建物が大きな被害を受けています。それでも蔵は酒造りを止めず、被害を受けた天明を再び火入れして「ハート天明」として出荷し、売り上げの一部を震災孤児のために寄付しました。震災2年目からは蔵の建て直しにも着手し、新しくなった蔵でいまも天明を醸しています。三代の女性が守ってきた蔵を、六代目が受け継ぎ、次へつないでいます。
どんな香りと味か
ここでは、取扱店の紹介文と受賞の評価軸から、天明の味わいを見ていきます。
「金色の天明」について、取扱店は「華やかな香り、柔らかい米の旨味と綺麗な酸、ザ・天明の味わい」と紹介しています。福島県産の酒米「夢の香」を37%まで磨き、福島県のオリジナル酵母で醸した一本です。定番の「オレンジの天明」については、「旨、甘、酸でバランスをとりながら、日本酒に流れる季節感を大切にしてつくられた」と評され、「天明を飲むなら、まずオレンジから」と言われる入り口の一本として親しまれています。
「金色の天明」が選ばれたのは、IWCの純米大吟醸酒部門。よく磨いた純米大吟醸を、世界の利き手がブラインドで評価する舞台です。取扱店が伝える華やかな香りと柔らかい旨味の印象は、純米大吟醸酒部門でゴールドを受けた今回の評価とも重なります。
手に入れるには
天明を購入したい方へ。まずは、つくり手である曙酒造の公式サイトをのぞいてみてください。天明がどんな考えで醸されているかが伝わってきます。
購入は、正規販売店から。日本酒専門店「佐野屋」の地酒.comでは、「金色の天明」や「オレンジの天明」が取り扱われています(人気のため品切れのこともあります。在庫は各店の表示時点)。よく磨いた「金色の天明」に出会えたら、その一本を。まずは通年で出ている「オレンジの天明」から入るのも、この蔵らしい楽しみ方です。
受賞歴に惹かれて選ぶのもいいですし、会津坂下という土地ごと味わうつもりで開けるのもいい。どんな一杯でも、自分にとってちょうどよく楽しめれば、それがいちばんです。飲んだ感想をマイドリのアプリにひとこと残しておくと、次の一本を選ぶときの手がかりになります。お酒との付き合い方そのものが気になったら、適酒とはものぞいてみてください。
出典:曙酒造「天明」公式サイト(つくり手情報)、正規販売店・地酒.com(佐野屋)ほか取扱店オンラインショップ掲載の蔵元紹介・商品情報(蔵の沿革・女系の酒蔵の歴史・鈴木孝市蔵元杜氏の就任経緯・原料米・精米歩合・味わいの紹介文)、復興庁「産業復興事例集」曙酒造の記録(東日本大震災による被害・「ハート天明」出荷・蔵の建て直しの経緯)、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2025 SAKE部門 純米大吟醸酒部門(ゴールドメダル・公式発表)、Kura Master 2023 純米酒部門(金賞・公式受賞酒一覧)