シャンパンのようにきめ細かな泡が立つ日本酒がある――そう聞くと、少し意外に感じるかもしれません。山梨県北杜市白州町の山梨銘醸がつくる「七賢 星ノ輝」は、まさにそういう一本です。そのスパークリングが、フランスの日本酒品評会Kura Master 2026で、サケ スパークリング部門のトップに選ばれました。スパークリング日本酒という入り口から、ご当地の一本に出会ってみます。
Kura Master 2026、スパークリング部門のトップに
今回の主役「七賢 星ノ輝 スパークリング」は、2026年5月11日に発表されたKura Master 2026のサケ スパークリング部門で、部門の最高位にあたる審査員賞を受けました。プラチナ賞に選ばれた酒のなかから、部門ごとに1点だけ選ばれる賞です。Kura Masterは、フランスで開かれる日本酒と本格焼酎の品評会で、フランス人のソムリエやレストラン関係者が、ラベルを伏せたブラインドの状態で、食と飲み物の相性を重視しながら一本一本を利き分けます。その舞台のスパークリング部門で、山梨・白州の泡が頂点に立った、ということになります。(金賞・プラチナ賞・審査員賞といったKura Masterの賞の序列は、用語解説(日本酒編)にまとめています。)
2026年は、Kura Masterがちょうど10回目を迎えた節目の年でした。この10周年を記念して、料理との相性を競う特別賞「アリアンス ガストロノミー賞」も設けられ、スパークリングがとりわけ注目された回です(この特別賞そのものは、別の蔵の一本が受けています)。泡もの全体が脚光を浴びるなかで、星ノ輝はその舞台に候補として名を連ね、部門のトップに立ちました。
七賢の評価は、これ一度きりのものではありません。2025年には、七賢の純米大吟醸「白心(はくしん)」が、世界最大級の品評会IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2025のSAKE部門で、最高賞にあたるチャンピオン・サケに選ばれています。国内外、視点の異なる舞台で評価を重ねているところに、この蔵の実力が表れています。
どんな酒か ― 瓶内二次発酵の、澄んだ泡
星ノ輝は、瓶のなかでもう一度発酵させて炭酸を生む「瓶内二次発酵」でつくられます。シャンパンと同じ考え方の製法です。仕上がりは、白いオリを取り除いた透明な「クリアタイプ」。とろりとした「にごり」の発泡ではなく、澄んだ見た目のスパークリングです。容量は720ml、アルコール度数は取扱店の表記でおよそ11%と、日本酒としては軽やかな部類に入ります。
精米歩合や使用米の品種は蔵として公表していないため、ここでは触れません。分かっているのは、南アルプスの水と米から、瓶のなかでていねいに泡を育てた一本だ、ということです。
どんな香りと味か
味わいについては、独自の言葉で飾らず、つくり手と利き手、取扱店の声をそのまま並べてみます。
まず、蔵元と正規特約店の紹介から。はせがわ酒店(正規特約店)に載る蔵元の言葉では、「コルクを抜くと、ふわっと香る吟醸香。」に始まり、「ファーストインパクトでは米の甘みを、その後すぐに、きめ細かな泡立ちが、全体をキリッと引き締めます。」と表現されています。同店は「瓶内二次発酵で、白いオリを引いた美しく透明なクリアタイプ。透き通った地元、北杜市白州町の空気感や、一点の曇りもない、夜空に光り輝く星をイメージしています」とも紹介しています。
次に、評価の軸から。星ノ輝が選ばれたKura Masterは、料理と合わせて楽しむ視点で、フランスの利き手が食と飲み物の相性を見る品評会です。蔵元自身も、この酒を「米由来の深い味わいが和洋を問わず様々なジャンルの料理を引き立てる」と説明していて、食卓に寄り添う一本という部門トップの文脈と、自然に重なります。
そして、取扱店のコメント。取扱店では、「すっきり華やかな、クリアでドライな味わい」(IMADEYA)、「スッキリと辛口でドライに仕上げた1本」(くるらストア)と紹介されています。米の甘みから入り、きめ細かな泡で引き締まる――三つの声はそろって、甘さに寄りかからない、辛口でドライな方向を指しています。
乾杯にも、食卓にも
軽やかな泡で辛口、というこの酒は、まず栓を抜いた瞬間の乾杯によく似合います。720mlの一本を数人で開けるところから、その場が少し華やぎます。透明でドライな見た目と味わいは、贈りものにも向くでしょう。蔵元が「和洋を問わず様々なジャンルの料理を引き立てる」と言うとおり、食事に合わせる食中酒としても楽しめます。難しく考えず、その日の料理とテーブルに、気軽に一本。そんな付き合い方のできる泡です。
名水の里・白州と、300年近い蔵
七賢を醸す山梨銘醸は、1750年(寛延3年)の創業。台ヶ原の地で酒造りを始めてから、270年あまりの歴史を持つ蔵です。仕込みに使うのは、南アルプス甲斐駒ヶ岳の伏流水。蔵の敷地内にある大きな井戸から、この天然水を汲んで酒を醸しています。白州といえば、サントリーのウイスキー「白州」でも知られる名水の里。同じ土地の水が、この泡を育てています。
「七賢」という酒名は、母屋の欄間に彫られた「竹林の七賢人」の一対にちなみます。1835年(天保6年)、母屋の新築のときに、高遠城主から贈られたものと伝えられています。その母屋の奥座敷は、1880年(明治13年)の明治天皇の巡幸で、宿泊の御座所に選ばれたという由緒も残ります。
これだけの歴史を持つ蔵でありながら、近年はスパークリング日本酒に力を入れてきた蔵としても知られます。星ノ輝は、その取り組みの先にある一本です。長く受け継がれてきた白州の水と、新しい泡の技術が、一杯のなかで出会っています。
手に入れるには
気になった方は、まず山梨銘醸の公式商品ページをのぞいてみてください。価格は720mlで税込6,050円(公式および正規特約店・はせがわ酒店の表示に基づく)。人気のため品切れになっていることもあります(在庫は各店の表示時点)。正規特約店では、はせがわ酒店などでも取り扱われています。
受賞歴に惹かれて選ぶのもいいですし、白州という土地ごと味わうつもりで開けるのもいい。どんな一杯でも、自分にとってちょうどよく楽しめれば、それがいちばんです。飲んだ感想をマイドリのアプリにひとこと残しておくと、次の一本を選ぶときの手がかりになります。お酒との付き合い方そのものが気になったら、適酒とはものぞいてみてください。
出典:山梨銘醸「七賢」公式サイト・公式商品ページ(星ノ輝の製品情報・瓶内二次発酵・クリアタイプ・容量・価格・蔵の沿革/創業年・酒名の由来・明治天皇巡幸・仕込み水の記述)、正規特約店 はせがわ酒店 オンラインショップ掲載の蔵元紹介・商品情報(味わいの紹介文・価格)、取扱店オンラインショップ(IMADEYA/くるらストア)掲載のテイスティングコメント、Kura Master 2026 公式(サケ スパークリング部門 審査員賞・審査の枠組み・第10回の開催概要)、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2025 SAKE部門(七賢「白心」チャンピオン・サケ受賞・公式発表)、北杜市 公式サイト(南アルプス甲斐駒ヶ岳の伏流水に関する記述)。アルコール度数は取扱店表記による(公式英語表記と一部相違あり)。