世界で一番に選ばれた酒、と聞くと身構えてしまいますが、その正体は淡路島で静かに山廃を守ってきた蔵の一本でした。
受賞のこと ― 兵庫の酒で初の最高賞
都美人酒造の「太陽」が、IWC(International Wine Challenge)2024のSAKE部門で純米吟醸(酒の部)のトロフィーを受け、さらに部門全体の最高賞「チャンピオン・サケ」に選ばれました。発表は日本時間の2024年7月10日。世界各地から集まった1,504点の頂点です。兵庫県の酒がこの賞に輝くのは、大会が始まった2007年以来はじめてのこと。(メダルやトロフィー、チャンピオン・サケといったIWCの賞の序列は、用語解説(日本酒編)にまとめています。)受賞酒を受け取ったのは能登杜氏の家修さん、代表は久田浩嗣さんです。地元の山田錦でつくった一本が、世界の中心に立ちました。
どんな味と香り ― 三者三様の言葉で
飲んでいないものの味を語るのは難しいので、3名の言葉を借ります。
IWC2024の審査では、マスクメロンやイチゴを思わせる香り、ナッツのニュアンス、アーモンドのスパイス、見事に溶け込んだ酸、と評されています。
つくり手の都美人酒造は、金沢酵母による爽やかな甘みをもった吟醸香と、米の旨味がしっかり引き出されたやさしい味わい、山廃仕込みならではの奥行きのある深い味、と紹介しています。
取扱店の神田屋は、マスクメロンを想わせる穏やかな香りに滑らかな口当たり、上品で落ち着いた旨みと酸味、と紹介し、冷やして良し、常温で旨し、ぬる燗で心地良し、と続けています。
山廃仕込みの純米吟醸は、一般に厚みのある旨味とふくよかな酸が持ち味とされます。世界の審査員も、つくり手も、店の人も、そろってメロンの香りに触れているのが面白いところです。
土地・つくり手の物語 ― 山廃を守り続けた淡路島の蔵
都美人酒造が生まれたのは1945年(昭和20年)、淡路島南部の10軒の蔵が合併したときです。「都美人」という社名は、合併した一軒、もとは伏見の酒造家が掲げていた商標に由来すると伝えられます。淡路島は国生み神話の島で、古くは朝廷に食材を納めた「御食津国(みけつくに)」とも呼ばれた食の豊かな土地。いま島に残る蔵は数軒とされますが、そのなかでこの蔵は、淡麗辛口が主流になった時代も創業以来の山廃仕込みを手放しませんでした。今でも製造のおよそ6割が山廃だといいます。2001年には、全国に数件しか残らない「天秤搾り」も復活させました。手間のかかる古い手法をあえて選び直す。「太陽」の奥行きは、そんな積み重ねの先にあるのだと思います。つくり手のことは、都美人酒造の公式サイトで。
買えるところ ― 人気の一本
正直にお伝えすると、世界最高賞のあと人気が高まり、蔵の公式直販でも「太陽」は品切れになっていることがあります(蔵公式時点)。タイミングによっては、すぐには手に入らないかもしれません。なので、いますぐ買える一本としてではなく、いつか出会えたときの一本として紹介させてください。山廃仕込の純米吟醸で、原料米は山田錦100%(兵庫県三木市吉川町産)、精米歩合55%、酵母は金沢酵母。容量は720mlと1800ml、価格は取扱店時点で720mlが税込2,178円でした(価格や在庫は変わります)。最新の入荷や取扱は、都美人酒造の公式サイトとオンラインショップで確かめてみてください。
受賞の一本を、自分の温度で
冷やでも常温でもぬる燗でも、と紹介されていた酒です。世界一の称号がついても、どの温度で開けるかは飲む人しだい。その日の気分でいちばんしっくりくる一杯を選べたら、それがこの酒のいちばんおいしい飲み方になります。自分なりの一杯を探す手がかりは適酒とはに、飲んだ夜のひとことを残したくなったらマイドリのアプリに。世界が認めた一本を、いつか、自分の温度で。
出典:IWC(International Wine Challenge)2024 公式発表、都美人酒造公式サイト・オンラインショップ、SAKETIMES(蔵取材記事)、神田屋オンラインショップ